Ceva 1 |
チェバが発見したチェバの定理(Ceva's theorem 1678年)は,図の三角形ABCの3つのCevianが1点Gで交わっているとき,各辺の分点で分けられた線分の比が次の等式を満たすという定理です.
$$\frac{AF}{FB}\cdot\frac{BD}{DC}\cdot\frac{CE}{EA}=1\tag{1}$$ この中で交わっている点GをCevian Point,分点を結んでできる三角形DEFをCevian Triangleといいます.重心,垂心,内心などもCevian Pointのひとつです.
このような「三角形の(ある意味での)中心」は,この定理以降に多数発見され,Evansville大学のClark Kimberlingが作成したサイト”Encyclopedia of Triangle Centers”に,2015年現在8700以上の「三角形の中心」が登録されています.その始めの5つは以下の通りです.
X(1)=incenter 内心(内接円の中心)
X(2)=centroid 重心
X(3)=circumcenter 外心(外接円の中心)
X(4)=orthocenter 垂心
X(5)=nine-point center 九点心(九点円の中心)
数学オリンピックで,ある三角形のCevianの長さの平均を求める問題が出されたことがあるそうですが,Cevianの長さといえば有名なものに中線定理(英語ではApollonius' theorem)があります.これは上図でDがBCの中点であるとき,
\[AB^2+AC^2=2(AD^2+BD^2)\tag{2}\] という等式が成り立つという定理です.これはBCとAHを対角線とする平行四辺形ABHCを考えたときも成り立つのでparallelogram law(平行四辺形の法則)ともいいます.
中線定理は,中線以外のCevianの長さすべてに当てはまるStewart's theorem(シュツワートの定理)の特別な場合になっています.Stewart's theoremは,上図のDがBCをm:nに内分するとき,次の式が成り立つという定理です.
\[nAB^2+mAC^2=(m+n)AD^2+nBD^2+mCD^2\tag{3}\] 確かにm=n=1のとき,式(2)と一致しています.
また逆に,中線定理でAB=ACのとき,式(2)は
\[AB^2=AD^2+BD^2\] となり,ピタゴラスの定理になります.
Cevianの長さを求めてみましょう.シュツワートの定理(3)で,AB=c, AC=b, BC=a, AD=dとすると,\[nc^2+mb^2=(m+n)d^2+\frac{n(ma)^2}{(m+n)^2}+\frac{m(na)^2}{(m+n)^2}\] となり,これを整理するとCevianの長さの平方は次式になります. \[d^2=\frac{mb^2+nc^2}{m+n}-\frac{mna^2}{(m+n)^2}\tag{4}\] よって,Cevianの長さはこの平方根になります.
Menelaus 1 |
これは式(1)と一致しますが,線分に向きをつけて考えると外分点が1つなので次式になります. \[\frac{AF}{FB}\cdot\frac{BD}{DC}\cdot\frac{CE}{EA}=-1\tag{5}\]
Menelaus 2 |
これはチェバの定理も同様で,辺ABおよびCA,CBの延長線とF,E,Dで交わっているとき,外分点が2つになるので,やはり同じ式(1)を満たします.従って,線分の向きまで考えると,チェバの定理とメネラウスの定理の満たす等式は右辺の±1だけ異なるということになります.
Ceva 2 |
【Cevian 問題】
Find the length of the cevian AD.
最上図で,AB=7, AC=8, BD=6, CD=5のとき,ADの長さを求めよ.
(解答はこちら)
<Reference>
Encyclopedia of Triangle Centers
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