Apr 29, 2022

Aliquot

「約数」という日本語は,他にも「因数」や「因子」などの言い方がありますが,英語でも divisor, measure, factor, submultiple, aliquot などいろいろな言い方があります.最初の3つは,GCD (Greatest Common Divisor), GCM (Greatest Common Measure), HCF (Highest Common Factor) と表すと,いずれも「最大公約数」を意味します.あまり使われませんが,greatest common submultiple という場合もあります.しかし,aliquot だけは少し違った意味があります.

数学英和・和英辞典(共立出版)には,

aliquot a. 割り切れる,整除できる. n. 割り切れる数,約数. ~ part 約数.

と書かれているので,これだけでは aliquot も同じ「約数」という意味ではないかと思いますが,実は多くの場合,aliquot または aliquot part というのは proper divisor(真約数),すなわちそれ自身を含まない約数を意味します.例えば12の divisors は 1, 2, 3, 4, 6, 12ですが,12の aliquot は 1, 2, 3, 4, 6になります.

関連するものに aliquot sum(アリコット和), aliquot sequence(アリコット数列)があります.aliquotだけ和訳がないのは不思議ですが,元々Latin語の ali (otherの意) とquot (how manyの意)から来ているそうです.

aliquot sequence(アリコット数列)

正の整数$k$の全約数の総和を$\sigma(k)$と表します.aliquot sum すなわち proper divisor の総和は,全約数の総和からそれ自身を引くので,$\sigma(k)-k$となります.$k$に対して,aliquot sum を返す関数$s(k)=\sigma(k)-k$を "restricted divisor function"といいます.正式な日本語訳はありませんが,強いていうなら意訳して「真約数関数」でしょうか.

aliquot sequence は,正の整数$k$から始まり,次の項がその前の項の restricted divisor function の値,すなわち aliquot sum になるという,次の漸化式を満たす数列です.$$s_0=k,\quad \quad s_{n+1}=s(s_n)=\sigma(s_n)-s_n$$例1. $k=4$のとき,\begin{eqnarray}s_0&=&4\\s_1&=&s(s_0)=\sigma(s_0)-s_0=\sigma(4)-4=(1+2+4)-4=1+2=3\\ s_2&=&s(s_1)=\sigma(s_1)-s_1=\sigma(3)-3=(1+3)-3=1\\ s_3&=&s(s_2)=\sigma(s_2)-s_2=\sigma(3)-3=1-1=0\end{eqnarray}
例2. $k=6$のとき,\begin{eqnarray}s_0&=&6\\s_1&=&(1+2+3+6)-6=1+2+3=6\\ s_2&=&(1+2+3+6)-6=1+2+3=6\end{eqnarray}
例3. $k=220$のとき,
\begin{eqnarray}s_0&=&220\\s_1&=&1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110=284\\ s_2&=&1+2+4+71+142=220\end{eqnarray}
例1は最後が「素数→1→0」となって終ります.例2は aliquot sum がそれ自身に一致する complete number(完全数)なので,同じ数が繰り返されます.例3はお互いが相手の aliquot sum になる a pair of amicable numbers(友愛数)なので,2数が交互に現れます.他にも3つ以上の数を繰り返す sociable numbers(社交数)があります.以上で aliquot sequence のパターンがすべて尽くされているとする Catalan-Dickson conjecture(カタラン-ディクソン予想)は,2022年4月現在,未解決問題となっています.

[Reference]

Aliquot sequences
https://www.unirioja.es/cu/jvarona/aliquot.html

aliquot part
https://www.daviddarling.info/encyclopedia/A/aliquot_part.html