Jul 19, 2016

Donkey Theorem

このdonkeyという言葉は,ロバという意味の他に「バカ」という意味もあり,ロバの別名であるassは俗語で「尻」という意味もあります.三角形の合同条件のひとつとして,「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい(SAS=Side-Angle-Side)」が知られていますが,「2組の辺とその間にない角がそれぞれ等しい(ASSまたはSSA)」という条件は,図のようにambiguous case(一意に定まらない場合)になります.これが合同条件として成り立たないということと,donkeyとassの意味とを掛けて,donkey theoremと呼んでいます.これはバカにして呼んでいるので,正しく成り立つ定理の名称ではありません.
    
  
  

三角形の辺と角の関係を細かく分類してみましょう.すべて最後に「がそれぞれ等しい」を省略しています.

①SSS=SSS 「3組の辺」 congruent(合同)
「直角三角形の斜辺と他の1辺」は三平方の定理を既知とすればもう1辺はすぐに求められるのでここに含まれます.

②SAS=SAS 「2組の辺とその間の角」 congruent
ドイツの数学者ヒルベルトDavid Hilbert (1862–1943) は著書「幾何学基礎論」の中で,これを三角形の合同公理としています.

③ASS=ASS 「2組の辺とその間にない対応する角」 ambiguous case
上図左の場合です.角辺辺の順で等しい三角形が2つできます.

④ASS=SSA 「2組の辺とその間にない対応しない角」 ambiguous case
上図右の場合です.角辺辺と辺辺角が等しい三角形が2つできます.

⑤ASA=ASA 「2組の角とその間の辺」または「1組の辺とその両端の角」 congruent
内角の和は180ºなので自動的に3組の角が等しくなり,2つの角の間の辺は対応する辺なので,三角形は1つに決まります.

⑥AAS=AAS 「2組の角とその間にない対応する辺」 congruent
自動的に3組の角が等しくなり,対応する辺が等しいので,三角形は1つに決まります.「直角三角形の斜辺とひとつの鋭角」といいう条件はここに含まれます.「直角三角形の斜辺と他の1辺」も三平方の定理を既知としない場合は,一方を裏返して「他の1辺」を重ねて二等辺三角形を作り,その底角が等しくなることから,「直角三角形の斜辺とひとつの鋭角」という条件になるので,ここに含まれます.

⑦AAS=SAA 2組の角(自動的に3組)とその間にない対応しない辺 similar(相似)

⑧AAA=AAA 3組の角(2組の角で十分) similar

因みに米国では,ロバはDemocrats(民主党)のシンボルになっていて「家庭」を象徴しているのに対し,Republican(共和党)のシンボルはelephant(ゾウ)で「知識と力」の象徴だそうです.

Jul 13, 2016

Sig Figs

これはsignificant figuresの省略形で,s.f.とも表します.Significant(重要な,意味のある,著しい)とfigure(図,形,姿,人物,数字)を合わせて訳すなら,「意味のある図」または「意味のある数字」かなと思いますが,これは後者の意味を持つ「有効数字」のことをいいます.

例えば123456という値を,3 significant figures(有効数字3桁)で近似するという場合,上から3桁を有意な数として,4桁目を四捨五入し,decimal notation(10進表記)では123000,またはscientific notation(科学表記)なら$1.23\times 10^5$と表します.

Sig figs rules
①0でない数字はすべて有効数字である
例 123.45の有効数字は1, 2, 3, 4, 5の5桁
②0でない数字の間の0は有効数字である 
例 101.1203の有効数字は1, 0, 1, 1, 2, 0, 3の7桁
③0でない数字の前が全ての0の場合,前にある0は有効数字ではない
例 0.00052の有効数字は5, 2の2桁
④小数点以下の0は有効数字である
例 12.2300の有効数字は1, 2, 2, 3, 0, 0の6桁
⑤小数点なしの数の0でない数字の後の0は有効数字である場合とない場合がある
例 2000の有効数字は次の4つの場合が有り得る
  a) 2100を四捨五入して2000を得た場合の有効数字は2だけの1桁
  b) 2020を四捨五入して2000を得た場合の有効数字は2, 0の2桁
  c) 2003を四捨五入して2000を得た場合の有効数字は2, 0, 0の3桁
  d) 2000.4を四捨五入して2000を得た場合の有効数字は2, 0, 0, 0の4桁

このfigureという用語を「図」という意味で用いる場合,"The statistics are shown in figure 3"なら,「その統計は図3に示されている」という意味になります.またsignificantという用語はなしで,単にdouble figuresなら2桁(の数)という意味になります.またfigureは計算という意味もあり,"do figures"は「計算する」という意味にもなります.

因みに,人形のこともfigureといいますが,これは人物の形をしたものという意味から来ています.また,figure skatingのfigureは図形という意味で,元々氷上に図形を描くという競技でしたが,その語源となった種目のcompulsory figures(規定)は1990年に廃止され,今はshort programとfree skatingだけになっています.

【Sig Figs 問題】
Find, correct to 3 significant figures, the volume of the solid of revolution formed when these functions are rotated through 360º about the x-axis:
a) y=x^3/(x^2+1) for 1≤x≤3
b) y=e^(sinx) for 0≤x≤2

(正解はこちら

Jul 9, 2016

Bearing

Vectors(ベクトル)の応用問題の中には,直進する物体の進行方向を求めるものがあり,その解答は,bearing ≈ 300ºとか,bearing  ≈ 60º west of north などとなっています.前者はtrue bearing(真方位)といい,真北線からclockwise direction(時計回り)に何度というように表します.また後者はconventional bearing(よく使われる方位)で,南北線から東または西へ何度というように表します.

Cardinal Points(基本方位)は,north, south, east, and westの4方位で,NSEW(北南東西)の順でいいます.日本では普通,東西南北の順でいいますが.麻雀では東南西北という順ですね.さらにそれら4つの方位の間に,half-cardinal pointsまたはquadrantal pointsまたはintercardinal pointsまたはintermediate (or ordinal) directionsと呼ばれるnorth east(北東), south east(南東), south west(南西) and north west(北西)があります.

例えば右図でPの方位は,true bearingでは140º,conventional bearingでは40º east of southとなり,これはS40ºEとも表します.日本語で「南東40ºの方向」ということになります.飛行機や船などの航路の問題でdirectionを問われたらbearingで答えるのが一般的です.

【Bearing 問題】
Boat A is at (x1y1)=(2, 4) at exactly 2:17 pm. It sails with velocity vector (1, 3). Boat B is at  (x2y2)=(11, 3). It begins to sail with velocity vector (1, a) at 2:19 pm to meet the boat A. Distance units are metres and t is in minutes from 2:17 pm.
a) Find x1(t) and y1(t) for boat A.
b) Find x2(t) and y2(t) for boat B.
c) At what time do they meet?
d) What was the direction and speed of boat B?
(正解はこちら

<Reference>
Bearings
http://www.mathsteacher.com.au/year7/ch08_angles/07_bear/bearing.htm

Jul 7, 2016

Stars and Bars Method

直訳すると「星と棒の方法」となりますが,combination with repetition(重複組合せ)の問題,別名multichoose problemまたはstars and bars problemと呼ばれる問題を解く方法です.

例えばりんご,みかん,バナナの3種類が多数ある中から4個を選ぶとします.すると(りんご、みかん、バナナ)の数の組合せは、
①全種類から少なくとも一つは選ぶ場合
(1,1,2),(1,2,1),(2,1,1)
の3通りあります.
②選ばない種類があってもいい場合
(0,0,4),(0,1,3),(0,2,2),(0,3,1),(0,4,0),
(1,0,3),(1,1,2),(1,2,1),(1,3,0),
(2,0,2),(2,1,1),(2,2,0),
(3,0,1),(3,1,0),
(4,0,0)
の15通りと急に多くなります.

種類や選ぶ個数が多くなったらどうするか.ここでstars and bars methodを使います.n種類のものが多数ある中からr個を選ぶとしましょう.

②の場合から先に考えます.これは,r個の★とn-1個の仕切り|(たて棒)を一列に並べる場合の数,すなわち「2種類の同じものを含む順列」n+r-1Cr=n+r-1Cn-1と同じになります.例えば上の②の場合のいくつかをstars and barsで表すと次のようになります。
(0,0,4)=||★★★★
(1,0,3)=★||★★★
(1,1,2)=★|★|★★
(4,0,0)=★★★★||
2本の仕切りの左側がりんご,間がみかん,右側がバナナと決めておけば,すべて同じ★で表してもいいわけです.n+r-1Crは簡単にnHrと表します.この場合はn=3,r=4なので,3H4=3+4-1C4=6C4=6C2=15と計算できます.

日本の参考書等では★の代わりに○がよく使われていますから,circles and barsといってもいいかも知れません.

①の場合は,まず各種類から1個ずつ選んでおいて,残りのr-n個を②の場合と同様に考えます.すなわち,nHr-n=3H4-3=3H1=3C1=3で求められます.

以上をまとめると,
①全種類から少なくとも一つは選ぶ場合
nHr-n
②選ばない種類があってもいい場合
nHr=n+r-1Cr=n+r-1Cn-1

さて上の果物の問題は,方程式x+y+z=4の整数解の組の個数を求める問題といえます.
①は正の整数解の組の個数を求める場合で,(x,y,z)の組合せは3H4-3=3通りです.
②は負でない整数解の組の個数を求める場合で,(x,y,z)の組合せは3H4=15通りです.
これらの数の組をmultiset(多重集合)といいます.

②の場合,nHrと表しますが,binomial coefficient(二項係数)nCrを$\binom{n}{r}$と書くときは,nHrを$\left(\!\binom{n}{r}\!\right)$と書きます.以上をまとめて式で表すと次のようになります.$$ _n H_r =\left(\!\binom{n}{r}\!\right)= _{n+r-1} C_r=\binom{n+r-1}{r}=\left( n-1, r \right)!=\frac{(n+r-1)!}{(n-1)!r!}$$途中の式$\left( n-1, r \right)!$は,multinomial coefficient(多項係数)の2項の場合の表し方で,多項係数の場合は次の式になります.$$\left(n_{1},n_{2},\cdot\cdot\cdot,n_{k}\right)!=\frac{(n_{1}+n_{2}+\cdot\cdot\cdot+n_{k})!}{n_{1}!n_{2}!\cdot\cdot\cdot n_{k}!}$$
因みに,次数が等しい項だけでできている多項式をhomogeneous polynomial(同次多項式または斉次多項式)といい、このlike term(同類項)の種類の数が重複組合せになります.nHrのHはこのhomogeneousの頭文字から来ています.
(例)x,y,zでできる4次の項
(0,0,4)=||★★★★→z4
(1,0,3)=★||★★★→xz3
(1,1,2)=★|★|★★→xyz2
(4,0,0)=★★★★||→x4

<Reference>
Multichoose
http://mathworld.wolfram.com/Multichoose.html