May 6, 2021

Elementary mathematics

どの国でもあると思いますが,その国で常識だと思われていることが,世界に目を向けたときに常識ではない,実はおかしいと感じることがよくあります.日本の教育関連で思いつくことをいくつか挙げてみると,
・年度始めが4月である.
・小学生だけがランドセルを使う.
・三学期だけ期間が短い.
・国立なのに女子大がある.
・教科名を小学校では「算数」,中学校以上では「数学」という.
etc....

[Quiz]
「数学」は英語で mathematics,または省略して math といいますが,小学校の教科名「算数」は英語でなんというでしょう?

[Answer](この下の行をドラッグしてください)
 和英辞典にはarithmeticとあります.

逆にこの単語を英和辞典で調べると,算数の他に,算術,計算などの意味がありますが,算数以外の意味の方が近いように思われます.

しかも,この単語は英語圏で「算数」という意味にはとられないようです.日本の「算数」にあたる用語は,ずばり mathematics です.小学校で学ぶ math だと強調するなら elementary mathematics となります.ただこれは「初等数学」(大雑把に言えば小中高の数学)という意味にも使われているので,もう少し正確にいうと.elementary school mathematics となります.

海外の現地校やインターナショナルスクールの小中高は,六三三制よりも五三四制が多いので,日本の「算数」をもっと正確に言うなら,mathematics at Japanese elementary school になるでしょう.

「数について学ぶ」ことなので,小学校でも中学以上でも数学(math)ですよね.中国・台湾や韓国・北朝鮮でも小学校での教科名は「数学」だそうです.小学校だけ「算数」という名称を使っているのは日本だけのようです.日本の小学校でも「数学」で良いのではないでしょうか.

よく算数と数学の違いはこうだという,いかにももっともらしい説明をする書籍やサイト等が見られますが,後付けの印象を強く感じます.

平成29(2017)年改訂の小学校学習指導要領解説では,従来の「算数的」という表現を「数学的」に変え,「数学的活動を通して,数学的に考える資質・能力を育成することを目指す」とし,中高と同じような表現になりました.ところが教科名については,

小学校の時に具体物を伴って素朴に学んできた内容を,中学校では数の範囲を広げ,抽象的・論理的に整理して学習し直すことになる。そして,さらに高等学校・大学ではそれらが,数学の体系の中に位置付けられていく。以上のことから,小学校では教科名を「算数」とし,中学校以上の「数学」と教科名を分けている。

と書かれています.しかし,小学校では「具体的」で中学から「抽象的」になるからというのは,教科名を分ける理由にはなりません.具体的な数学もあれば抽象的な数学もあるからです.

文科省の他の文書も「算数・数学」とひとまとめにして述べる場合が多く見られますが,これらをまとめて「数学」だけにすれば,文章もすっきりして読みやすくなるでしょう.

文科省は,世界標準の小中高カリキュラム "International Baccalaureate (IB)" を実施する日本の学校を増やすため,高校の最後の2年間のカリキュラムDiploma Program (DP)の6教科のうち4教科を日本語でできる「日本語ディプロマ」を普及させようとしています.このように教育のグローバル化を目指す中で,小学校だけ「算数」という呼び方を残すのは時代遅れのような気がします.

日本の小学校も教科名を「数学」にするべきだと思います.

[Reference]

英語で「算数」はなんと言うの?│ arithmeticじゃないよ
https://www.sanctio.net/arithmetic/

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