直訳すると「第一原理」となるfirst principlesは形而上学や自然科学における用語としては「他のものから推論することができない命題」という意味があります.数学では定義や公理がこれに当たり,「定理を導くための前提となる命題」ともいえます.
微分の問題で,differentiate from first principlesといわれたら,直訳すれば「第一原理から微分せよ」となりますが,これは「定義に従って微分せよ」という意味で,find the derivative by (using the) limit definitionという表現をする場合もあります.
具体的には,次のlimit definition(微分の定義)の式を使って,derivative(導関数)を求めよという意味になります.$$\begin{align} f'(x) &= \lim_{h\to 0} \frac{f(x + h) - f(x)}{h} \\ &= \lim_{Δx\to 0}\frac{f(x + Δx) - f(x)}{Δx}\end{align}$$よく$h$が使われますが,$Δx$,$δ$,dもよく使われるので,delta methodとも呼ばれています(deltaの大文字は$Δ$,小文字は$δ$,alphabetのdに当たります).
数学で導関数という意味のderivativeは,言語学では派生語,経済学では金融派生商品,化学では誘導体などいろいろな意味があります.「派生する」という動詞deriveのderivative(派生語)になっています.つまり,"derivative"はderivativeです(笑).
例えばtanxの微分は,sinx,cosxを微分してからquotient rule(商の微分)を用いて次のようにすることが多いのですが,$$\begin{align}(\tan x)' &= \left(\dfrac{\sin x}{\cos x}\right)' \\ &= \dfrac{(\sin x)'\cos x-\sin x(\cos x)'}{\cos^2 x} \\ &= \dfrac{\cos^2x+\sin^2x}{\cos^2 x} \\ &= \dfrac{1}{\cos^2x} \\ &= \sec^2 x \end{align}$$これを微分の定義に従って計算すると次のようになります.$$\begin{align}(\tan x)' &= \lim_{h\to 0}\frac{\tan(x+h)-\tan x}{h} \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{1}{h}\left(\dfrac{\tan x+\tan h}{1-\tan x\tan h}-\tan x\right) \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{1}{h}\left(\dfrac{\tan h+\tan^2 x\tan h}{1-\tan x\tan h}\right) \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{\tan h}{h}\cdot\dfrac{1+\tan^2 x}{1-\tan x\tan h} \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{\sin h}{h}\cdot\dfrac{1}{\cos h}\cdot\dfrac{1}{1-\tan x\tan h}\cdot\dfrac{1}{\cos^2 x} \\ &= 1\cdot 1\cdot \dfrac{1}{1-0}\cdot \sec^2 x
\\ &= \sec^2 x \end{align}$$【First Principles 問題】
Differentiate lnx(=logex) from first principles.
定義に従ってlnx(=logex)を微分せよ.
(正解はこちらです)
<Reference>
The Derivative from First Principles - Interactive Mathematics
http://www.intmath.com/differentiation/3-derivative-first-principles.php
No comments:
Post a Comment