日本の高校教科書にある方べきの定理は、図1と図2の場合、
この定理はもともとEuclid's Elements Book III(ユークリッドの「原論」第3巻)にあります。
$PA\cdot PB=PC\cdot PD$
図3の場合、$PA\cdot PB=PT^2$
が成り立つとなっています。この定理はもともとEuclid's Elements Book III(ユークリッドの「原論」第3巻)にあります。
Proposition 35(第35命題)
"If in a circle two straight lines cut one another, then the rectangle contained by the segments of the one equals the rectangle contained by the segments of the other."
「ある円の中で2本の直線が交わっているとき、一方の2線分でできる長方形(の面積)と他方の2線分でできる長方形(の面積)は等しい」
これは図1で、
$PA\cdot PB=PC\cdot PD$
が成り立つという意味になります。Proposition 36(第36命題)
"If a point is taken outside a circle and two straight lines fall from it on the circle, and if one of them cuts the circle and the other touches it, then the rectangle contained by the whole of the straight line which cuts the circle and the straight line intercepted on it outside between the point and the convex circumference equals the square on the tangent."
「ある円の外の点を通る2本の直線の一方が円と交わり、他方が円と接しているとき、外の点と交点を結ぶ2線分でできる長方形(の面積)と接線の上の正方形(の面積)は等しい」
これは図3で,
$PA\cdot PB=PT^2$
が成り立つという意味になります.以上まとめると,
$$PA\cdot PB=PC\cdot PD=PT^2\tag{1}$$
というわけで「方べき」は「長方形の2辺の積」「正方形の1辺の2乗」という意味だと考えられます.GeoGebraでこの面積を視覚化したものを作ってみました.
Euclid's Elements (BC300) から約2000年を経た1826年に,power of a pointはスイスの数学者Jacob Steinerによって次のように定義されました.図4で、点Pから円の中心までの距離をd,円の半径をrとするとき,
$$p=d^2-r^2\tag{2}$$この値は,点Pが円外ならd>rなので
具体例を見てみましょう.r=1,d=$\frac{5}{3}$のとき,円外の点Pのpower of the pointは,
Steinerは弦から点へと視点を移し,$d^2-r^2$という不変量でpower of a pointを定義しました.今となっては,「長方形,正方形の面積」というよりは「円に対して点が持つ値」,まさに文字通り「点の力」というべきではないでしょうか.
因みに,図1の場合を"intersecting chords theorem(直訳:交弦定理)",図2の場合を"intersecting secants theorem(直訳:交割線定理",図3の場合を"secant-tangent theorem(直訳:割線接線定理)"と呼ぶ場合があります.
<Reference>
Wolfram MathWorld > Circle Power
このウェブページの式(4)はrが抜けています.チェックしてみて下さい.
Mathematical Association of America (MAA) > Jacob Steiner and the Power of a Point
図4 |
$$p=d^2-r^2\tag{2}$$この値は,点Pが円外ならd>rなので
$p=d^2-r^2=PT^2$
という正の数になり,円上ならd=rなので0になり,点P'のように円内ならd'<rなので
$p=d'^2-r^2=-P'T^2$
という負の数になります.従って,式(1)は式(2)の絶対値になっています.具体例を見てみましょう.r=1,d=$\frac{5}{3}$のとき,円外の点Pのpower of the pointは,
$p=\left(\frac{5}{3}\right)^2-1^2=\frac{16}{9}$
円内の点P'のpower of the pointは,d'=$\frac{3}{5}$なので,
$p=\left(\frac{3}{5}\right)^2-1^2=-\frac{16}{25}$
となり,このときの点Pと点P'はinversive geometry(反転幾何学)という分野のinverse pointという関係になります.Steinerは弦から点へと視点を移し,$d^2-r^2$という不変量でpower of a pointを定義しました.今となっては,「長方形,正方形の面積」というよりは「円に対して点が持つ値」,まさに文字通り「点の力」というべきではないでしょうか.
因みに,図1の場合を"intersecting chords theorem(直訳:交弦定理)",図2の場合を"intersecting secants theorem(直訳:交割線定理",図3の場合を"secant-tangent theorem(直訳:割線接線定理)"と呼ぶ場合があります.
Wolfram MathWorld > Circle Power
"circle power" という用語が方冪関係で調べるとWolframなどで出てくるのですが,これも方冪なのでしょうか。何やらよく分からなくなってしまいました。
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