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Feb 19, 2023

Solid Angle

Plane angle(平面角)は,日本では高校の必履修「数学Ⅰ」の三角比まで 45° や 90° などの degrees(度数法)を使いますが,「数学Ⅱ」の三角関数からは微分積分で威力を発揮する radians(弧度法)を使います.弧度法は半径1の円の一部分(すなわち弧)の長さで表すので,一周なら 360°=2π,半周なら 180°=π,直角なら 90°=π/2 と表します(単位:radian).

Solid angle(立体角)はその3次元への拡張なので,この訳が特に「意外」というわけではありませんが, 高校では扱われないので多くの人が「そんな角もあったのか」と思うことでしょう.

平面角は1点に集まる2辺の間の広がり具合を表すのに対し,立体角は1点に集まる面がつくる空間の広がり具合を表します.その定義はというと,平面角は半径1の円の扇形の中心角を弧の長さで表すのに対して,錐体の頂点に集まる面がつくる立体角は,その頂点を中心とする半径1の球面がその錐体と交わる部分の面積で表します.角錐なら spherical polygon(球面多角形),円錐なら spherical circle(球面円)(または spherical cap(球冠)ともいう)の面積になります.

例えば,右図のように,半径1の球の中心を頂点とする三角錐の,その頂点に集まる3平面がつくる立体角は,この球面上の黒い部分(球面三角形)の面積になります.平面上の三角形は3つの直線で囲まれた図形ですが,それと同じように球面三角形は3つの球面直線で囲まれた図形です.(注)球面幾何学において球面直線は大円(球と同じ半径の球面上の円)のことをいいます.なのでどの2本の球面直線も平行にはならず,必ず2点で交わります.

球面多角形や球面円は球面上の図形なので,平面上よりも膨らんでいる分だけその面積は大きくなります.また,それらを求める公式もよく知られています.
(球面の半径を1とします)
 ①球面n角形 S=ni=1θi(n2)π  (θiは内角,Harriot's theorem)
  例えば球面三角形はS=θ1+θ2+θ3πになります.
 ②球面円 ω=2π(1cosθ)=2πh  (θは下図の角,hは球面円の高さ)

一般にこのような球面上の一部分の面積は次のように積分を使って求めることができます.

z軸となす角がθでx軸となす角がφである位置ベクトルを持つ球面上の点(sinθcosφ, sinθsinφ, cosθ)(上図の赤い点)を含む微小長方形dωは,経線方向の長さがdθ,緯線方向の長さがsinθdφなので,面積はそれらの積になります.dω=dθsinθdϕよって立体角ωはこの両辺を積分して,次の式で求められます.ω=sinθdθdϕ

円錐の頂点の立体角は,先に述べたように球面円の面積になります.下図はsphere(球面)とspherical cone(球面円錐=円錐と球面円のつながった立体)(またはspherical sector(球面扇形)ともいう)です.球の中心を頂点とし,z軸を中心軸とし,母線とz軸のなす角がθである球面円錐を考えると,底面である球面円は 0≦φ<2πとなるので,上の式から次のように立体角 ω(上の公式)が求まります.

ω=2π0dϕθ0sinθdθ=2π[cosθ]θ0=2π(1cosθ)例えばθ=π/6 (30°)のとき,立体角は次の値になります(単位:steradian).ω=2π(1cosπ6)=2π(132)=(23)π0.268πこれで球面円のない円錐の部分だけだったら,底面の面積はπsin2π6=π(12)2=0.25πなので,それより膨らんでいる分だけ大きくなっていますね.同じ計算で,θ=π/3 のときは ω=π,θ=π/2(半球)のときは ω=2π,特に θ=π(全球)のときは ω=4π になって球の表面積に一致します.

因みに,上の2θを円錐の apex angle(頂角)といいますから,円錐の頂角がπ/3のときの立体角は0.268π,円錐の頂角がπ(半球)のときの立体角は2π,円錐の頂角が2π(全球)のときの立体角は4πということになります.

[Reference]