Nov 30, 2017

Sign Chart or Sign Diagram

いろいろな意味のある sign ですが,数学では+または-の符号を意味します.すると sign chart は±を示す符号図ということになります.

例えば象限によって異なる三角比の符号を表す図も sign chart といいますが,微分して増減を調べるときも右のような sign chart (or sign diagram) が使われます.

関数 y=f(x) のグラフを書くには,まず first derivative(一次導関数)f'(x)を求め,f'(x)=0 となる点,すなわち stationary point(停留点)(critical point = 臨界点ともいいます)を求め,次に sign chart を書き,first derivative test(一階微分判定法)をするという手順になります.
[First derivative test]
Suppose f(x) is continuous at a stationary point $x_0$.
1. If f'(x)>0 on an open interval extending left from $x_0$ and f'(x)<0 on an open interval extending right from $x_0$, then f(x) has a local maximum (possibly a global maximum) at $x_0$.
2. If f'(x)<0 on an open interval extending left from $x_0$ and f'(x)>0 on an open interval extending right from $x_0$, then f(x) has a local minimum (possibly a global minimum) at $x_0$.
3. If f'(x) has the same sign on an open interval extending left from $x_0$ and on an open interval extending right from $x_0$, then f(x) has an inflection point at $x_0$.
(WolframMathWorld)
つまり,stationary point で,f'(x)の sign が+から-に変われば極大値,-から+に変われば極小値,変わらなければ変曲点であると判定します.英語の本には増減表に当たる用語は見つからず,強いて言えば derivative sign chart がこれに当たり,最後に極値または変曲点のy座標を求めて,グラフを描くということになります.

少し複雑な関数になると,second derivative test(二階微分判定法)で,曲線の凹凸も判定します.日本語との大きな違いは,上に凸とか下に凸ではなく,concave downward(下に凹),concave upward(上に凹)という言い方をすることです.これをconcavity といいます.上にへこんでいるとか下にへこんでいるとか言うのはちょっと変な感じがしますね.

同じ意味ですが,微分を意識せずにparabola(放物線)を考える場合は, 下に凸を opens upward,上に凸を opens downward という言い方をすることが多いです.上に開いているとか下に開いているということになりますが,この言い方の方がまだ違和感が少ないように思います.

Nov 2, 2017

Asymmetry & Antisymmetry

対称という意味の symmetry に,a とか anti とかつけばどう意味になるでしょうか.

Asymmetry の日本語訳は非対称.読み方は æsímətri or eisímətri の2通りあります.カタカナでなるべく実際の発音に似せるとアシリまたはエイシリとなります.

Antisymmetry の方の日本語訳は反対称,これも読み方が ænti-símətri or æntɑɪ-símətri と2通りあり,前者は英国でアンチシリ,米国でアリ,後者はアンタイシリになります(同僚の米国人に教わりました).

では asymmetry と antisymmetry の意味の違いは何でしょうか.どっちも対称でないのですから,同じやん(大阪弁)といいたくなりますね(笑).しかし,数学では明確な違いがあります.

[Binary relation(二項関係)における symmetric relation(対称関係), asymmetric relation(非対称関係)and antisymmetric relation(反対称関係)]

Binary relation の最も簡単な例は2つの数の関係です.aからbへRという関係があるとき,aRbと表します.例えば3>2などの関係です.

■「aからbへの関係が成り立つならば,bからaへの関係も成り立つ」という場合,symmetric relation といいます.すなわち,$$\ aRb\;\Rightarrow bRa$$例えばRが=という関係のとき,a=bならばb=aも成立するので symmetric relation になります.

■「aからbへの関係が成り立つならば,bからaへの関係が成り立たない」という場合,asymmetric relation といいます.すなわち,$$\ aRb\;\Rightarrow \lnot (bRa)$$例えばRが>という関係のとき,a>bならばb>aは成立しないので asymmetric relation になります.

■「aからbへの関係が成り立ち,かつbからaへの関係も成り立つならば,a=bが成り立つ」という場合,antisymmetric relation といいます.すなわち,$$\ aRb\land bRa\ \Rightarrow a=b$$例えばRが≧という関係のとき,a≧bかつb≧aならばa=bが成立するので antisymmetric relation になります.また,集合の包含関係でも次式が成り立つので,antisymmetric relation といえます.
$A\subseteq B\land B\subseteq A\Rightarrow A=B$

[関数/整式/行列などの asymmetry(非対称性)と antisymmetry(反対称性)]

■Symmetry なグラフといえば正規分布ですが,その峰が左右にずれた場合,asymmetry な曲線になります.分布の非対称性を示す指標を skewness(歪度=わいど )といい,峰が右にずれて左が低い場合(J型)の歪度は負,左右対称であれば歪度は0,峰が左にずれて右が低い場合(L型)の歪度は正になります.

■Antisymmetry は,「ある変換をした結果が逆の符号になるもの」をいいます.

例えば関数y=f(x)で,f(-x)=f(x)となる偶関数は symmetry,f(-x)=-f(x) になる奇関数は antisymmetry になります.しかし奇関数は rotational symmetry with respect to the origin(原点対称)なので広義では symmetry ともいえます.

また整式 f(x,y) で,xとyを入れ替えても変わらない対称式,例えば x+y は symmetry であり,xとyを入れ替えると符号が変わる交代式,例えば x-y は antisymmetry になります.

さらに行列でも,行列$A$に対してその transpose(転置行列)$A^T$が等しいときは symmetry,符号が逆になるものは antisymmetry になります.因みに行列式も,行か列を入れ替えると次のように符号が変わるので antisymmetry になります.
$\begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix} = ad - bc$,   $\begin{vmatrix} c & d \\ a & b \end{vmatrix} = bc - ad$

[Reference]
Binary relation
https://en.wikipedia.org/wiki/Binary_relation
反対称性
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E7%A7%B0%E6%80%A7
Symmetry in mathematics
https://en.wikipedia.org/wiki/Symmetry_in_mathematics