Nov 30, 2017

Sign Chart or Sign Diagram

いろいろな意味のある sign ですが,数学では+または-の符号を意味します.すると sign chart は±を示す符号図ということになります.

例えば象限によって異なる三角比の符号を表す図も sign chart といいますが,微分して増減を調べるときも右のような sign chart (or sign diagram) が使われます.

関数 y=f(x) のグラフを書くには,まず first derivative(一次導関数)f'(x)を求め,f'(x)=0 となる点,すなわち stationary point(停留点)(critical point = 臨界点ともいいます)を求め,次に sign chart を書き,first derivative test(一階微分判定法)をするという手順になります.
[First derivative test]
Suppose f(x) is continuous at a stationary point $x_0$.
1. If f'(x)>0 on an open interval extending left from $x_0$ and f'(x)<0 on an open interval extending right from $x_0$, then f(x) has a local maximum (possibly a global maximum) at $x_0$.
2. If f'(x)<0 on an open interval extending left from $x_0$ and f'(x)>0 on an open interval extending right from $x_0$, then f(x) has a local minimum (possibly a global minimum) at $x_0$.
3. If f'(x) has the same sign on an open interval extending left from $x_0$ and on an open interval extending right from $x_0$, then f(x) has an inflection point at $x_0$.
(WolframMathWorld)
つまり,stationary point で,f'(x)の sign が+から-に変われば極大値,-から+に変われば極小値,変わらなければ変曲点であると判定します.英語の本には増減表に当たる用語は見つからず,強いて言えば derivative sign chart がこれに当たり,最後に極値または変曲点のy座標を求めて,グラフを描くということになります.

少し複雑な関数になると,second derivative test(二階微分判定法)で,曲線の凹凸も判定します.日本語との大きな違いは,上に凸とか下に凸ではなく,concave downward(下に凹),concave upward(上に凹)という言い方をすることです.これをconcavity といいます.上にへこんでいるとか下にへこんでいるとか言うのはちょっと変な感じがしますね.

同じ意味ですが,微分を意識せずにparabola(放物線)を考える場合は, 下に凸を opens upward,上に凸を opens downward という言い方をすることが多いです.上に開いているとか下に開いているということになりますが,この言い方の方がまだ違和感が少ないように思います.

Nov 2, 2017

Asymmetry & Antisymmetry

対称という意味の symmetry に,a とか anti とかつけばどう意味になるでしょうか.

Asymmetry の日本語訳は非対称.読み方は æsímətri or eisímətri の2通りあります.カタカナでなるべく実際の発音に似せるとアシリまたはエイシリとなります.

Antisymmetry の方の日本語訳は反対称,これも読み方が ænti-símətri or æntɑɪ-símətri と2通りあり,前者は英国でアンチシリ,米国でアリ,後者はアンタイシリになります(同僚の米国人に教わりました).

では asymmetry と antisymmetry の意味の違いは何でしょうか.どっちも対称でないのですから,同じやん(大阪弁)といいたくなりますね(笑).しかし,数学では明確な違いがあります.

[Binary relation(二項関係)における symmetric relation(対称関係), asymmetric relation(非対称関係)and antisymmetric relation(反対称関係)]

Binary relation の最も簡単な例は2つの数の関係です.aからbへRという関係があるとき,aRbと表します.例えば3>2などの関係です.

■「aからbへの関係が成り立つならば,bからaへの関係も成り立つ」という場合,symmetric relation といいます.すなわち,$$\ aRb\;\Rightarrow bRa$$例えばRが=という関係のとき,a=bならばb=aも成立するので symmetric relation になります.

■「aからbへの関係が成り立つならば,bからaへの関係が成り立たない」という場合,asymmetric relation といいます.すなわち,$$\ aRb\;\Rightarrow \lnot (bRa)$$例えばRが>という関係のとき,a>bならばb>aは成立しないので asymmetric relation になります.

■「aからbへの関係が成り立ち,かつbからaへの関係も成り立つならば,a=bが成り立つ」という場合,antisymmetric relation といいます.すなわち,$$\ aRb\land bRa\ \Rightarrow a=b$$例えばRが≧という関係のとき,a≧bかつb≧aならばa=bが成立するので antisymmetric relation になります.また,集合の包含関係でも次式が成り立つので,antisymmetric relation といえます.
$A\subseteq B\land B\subseteq A\Rightarrow A=B$

[関数/整式/行列などの asymmetry(非対称性)と antisymmetry(反対称性)]

■Symmetry なグラフといえば正規分布ですが,その峰が左右にずれた場合,asymmetry な曲線になります.分布の非対称性を示す指標を skewness(歪度=わいど )といい,峰が右にずれて左が低い場合(J型)の歪度は負,左右対称であれば歪度は0,峰が左にずれて右が低い場合(L型)の歪度は正になります.

■Antisymmetry は,「ある変換をした結果が逆の符号になるもの」をいいます.

例えば関数y=f(x)で,f(-x)=f(x)となる偶関数は symmetry,f(-x)=-f(x) になる奇関数は antisymmetry になります.しかし奇関数は rotational symmetry with respect to the origin(原点対称)なので広義では symmetry ともいえます.

また整式 f(x,y) で,xとyを入れ替えても変わらない対称式,例えば x+y は symmetry であり,xとyを入れ替えると符号が変わる交代式,例えば x-y は antisymmetry になります.

さらに行列でも,行列$A$に対してその transpose(転置行列)$A^T$が等しいときは symmetry,符号が逆になるものは antisymmetry になります.因みに行列式も,行か列を入れ替えると次のように符号が変わるので antisymmetry になります.
$\begin{vmatrix} a & b \\ c & d \end{vmatrix} = ad - bc$,   $\begin{vmatrix} c & d \\ a & b \end{vmatrix} = bc - ad$

[Reference]
Binary relation
https://en.wikipedia.org/wiki/Binary_relation
反対称性
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E7%A7%B0%E6%80%A7
Symmetry in mathematics
https://en.wikipedia.org/wiki/Symmetry_in_mathematics

Oct 6, 2017

Power Rule

一般に rule といえば規則や決まりという意味に使われますが,数学では場合によって公式,法則,定理などと訳されています.

[examples of rule]
■change of base rule 底の変換公式(change of base formula の方がよく使われますがこの表現もよく使われます),quotient rule 商の微分公式や chain rule 合成関数の微分公式などの derivative rules 導関数の公式,substitution rule 置換積分の公式などの integration rules 積分の公式
■exponent rules / exponential rules 指数法則,log rules / logarithm rules 日本の教科書では「対数の性質」
■sine rule & cosine rule 正弦定理と余弦定理

一般に力という意味の power は,数学では冪(べき=累乗)の意味があります.従って,power rule といえば,冪公式とか冪法則などと訳せそうですが,数学でこの日本語訳は見たことがありません(統計学で冪乗則,精神物理学で冪法則と訳される異なる意味の power law という用語があります).

前置きが長くなりましたが,指数,対数,微分,積分にそれぞれ power rule があります.つまり,次の公式はすべて power rule と呼ばれています.$$(a^m)^n=a^{mn}$$$$\log_{a} M^k=k\log_{a}M$$$$\frac{d}{dx} x^{n}=nx^{n-1}$$$$\int x^{n}dx=\frac{1}{n+1} x^{n+1}+C$$特に最初の指数の公式(指数法則のひとつ)は,power of power rule とか power to power rule とも呼ばれています.

冪の形の英語の読み方は少し難しくて,次のような言い方をします.
$2^2$: two squared
$2^3$: two cubed
$2^4$: two to the power of four / two to the fourth power / two to the fourth / two to the four

余談ですが,1985年の Janet Jackson と Cliff Richard のデュエットで "Two to the Power of Love" という曲がありました.数学的に訳せば「2の愛乗」となりますが,「ふたりのラブソング」という邦題がついていました(笑).

[Reference]
❤︎² Derivatives... How? (mathbff)
https://www.youtube.com/watch?v=hCLfogkqzEk&t=252s
How to read exponential expressions, e.g., “2^16”?
https://english.stackexchange.com/questions/74169/how-to-read-exponential-expressions-e-g-216

Sep 28, 2017

LHS and RHS

この図は英語の教科書の一部ですが,これを見ればLHS & RHSの意味が分かるのではないでしょうか.二次方程式を平方完成を用いて解いています.問題文の solve for exact values は,approximation(近似値)ではない正確な値,すなわちルートやπを使った値を要求しています.

解答の右側の{ }の1行目は「定数を右辺へ移項する」,2行目は「平方完成する」,3行目は「左辺を因数分解する(factoriseはUK式表現)」という意味なので,LHSは左辺,RHSは右辺を意味していると分かります.これらはleft-hand side,right-hand sideを省略した表現になっています.因みに横の吹き出しは「両辺に加える平方数はxの係数の半分の2乗」だと言っています.

長い用語を頭文字だけで表すabbreviation(略語)はよく目にします.新たにひとつの単語のように読むものをacronym(頭字語)といいますが(FOIL Methodで登場),アルファベットだけをそのまま読む場合はinitialismといいます.LHS & RHSはinitialismになります.他にも数学に関連するものを少し見てみましょう.

SSS, SAS, ASA, RHA, RHS, HL(Hypotenuse Leg Theorem, Donkey Theorem で登場)ここにもRHSがありましたね.こちらは right angle hypotenuse side の省略で,三角形の合同条件「直角三角形の斜辺と他の1辺が等しい」という意味になります.

SOHCAHTOA(SOHCAHTOAで登場した三角比の覚え方),他によく知られたもので,GCD(greatest common divisor=最大公約数),LCM(least common multiple=最小公倍数),QED(quod erat demonstrandum=証明終り),SD(standard deviation=標準偏差)などいろいろ思い浮かびますね.SDは,一般にはSDカード(secure digital memory card)が有名ですが,日本語をinitialismにしてしまうタレントのDAIGOさんによると,「外に出る」だそうです(笑).

他に対になっているものとしては,ODE (ordinary differential equation=常微分方程式) & PDE (partial differential equation=偏微分方程式) ,FTA (Fundamental Theorem of Algebra=代数学の基本定理) & FTC (Fundamental Theorem of Calculus=微分積分学の基本定理)などがあります.

Abbreviations.comというサイトには多数の略語が紹介されています.数学だけでも3000を超えています.そこには,LHSは一つだけだったのに対し,RHSは3つありました.あともう1つは rectangular hollow section(長方形中空断面)でした.このサイトでたまたまWME=Women and Mathematics Educationというのを見つけたので,何だろうと思って調べてみたら,こういう名称の団体であることが分かりました.

[Reference]
The difference between an acronym and an initialism
http://www.todayifoundout.com/index.php/2012/05/the-difference-between-an-acronym-and-an-initialism/
Abbreviations.com
http://www.abbreviations.com/

Sep 11, 2017

Antilogarithm

Anti-aging(アンチエイジング)といえば老化防止,抗加齢という意味ですね.Anti-warならば反戦というように,antiは主に「抵抗」とか「反対」という意味があります.

1でない正の数aを底とするMの対数 logaM における正の数Mを真数といい,英語ではこれをantilogarithmまたはantilogといって,対数関数の逆関数という意味も持っています.Common logarithm(常用対数)は,Log base 10 とか Briggs' logarithmともいいいますが,この log10M を logM と表すとき,
If logM=x, then M is called the antilogarithm of x and is written as M=antilogx. For example, if log39.2=1.5933, then antilog1.5933=39.2
(math-only-math.com)
The number of which a given number is the logarithm (to a given base). If x is the logarithm of y, then y is the antilogarithm of x.‎
(Wiktionary 英語版)
The inverse function of the logarithm, defined such that $\log_{b}(\mathrm{antilog}_{b}z)=z=\mathrm{antilog}_{b}(\log_{b}z)$. The antilogarithm in base b of z is therefore $b^z$.
(Wolfram MathWorld)
というわけで,指数関数も対数関数の逆関数ですから,底が10のとき,以下の3つの式は全て同じ意味になります.$$10^3=1000$$$$\mbox{antilog} \ 3=1000$$$$\log1000=3$$電卓がないときはcommon log table(常用対数表)を使いますが,antilog table(真数表)もあります.下の表から$10^{0.5678}=3.697$が得られます.因みに電卓を使うと,$10^{0.5678}=3.696579068$まで求められますが,WolframAlphaを使うと,希望すれば小数以下のかなり先まで表示してくれます.

余談ですが,三角比の表も円関数の真数表と呼んでいました.国立国会図書館デジタルコレクションの「對數表及眞數表」には,「常用對數表」の次に「圓函數ノ眞數表(三角比の表)」があり,その次には球面三角法で使われる「圓函數ノ對數表」すなわち10+log10(sinx°)の値の表(例えば10+log10(sin1°)=8.24186)が掲載されています.

因みに,似た用語で antiderivative(原始関数)がありますが,primitive function,primitive integral,indefinite integralとも呼ばれています.

[Reference]
Antilogarithm
http://www.math-only-math.com/antilogarithm.html
How to Use Log Tables
http://abitofauldmaths.org/2013/08/how-to-use-log-tables/
国立国会図書館デジタルコレクション 對數表及眞數表
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/826552
江戸の数学 > 第1部 和算の歴史 > 第5章 西洋数学の導入 > コラム 三角関数表 > 対数表
http://www.ndl.go.jp/math/s1/c8_3.html

Aug 18, 2017

Natural Number

Natural number(自然数)は,用語としては簡単ですが,意外なのはその定義が異なる場合があるということです.日本の学習指導要領で,natural numberの定義はpositive integer(正の整数){1, 2, 3, ....} なので,これが当然のように思われますが,場合によってはnon-negative integer(負でない整数){0, 1, 2, 3, ....} をnatural numberとする場合があります.つまりnatural numberに0を含む場合があるということです.海外の数学教科書には,natural numberに0を含む場合と含まない場合が混在しています.

ISO = International Organization for Standardization(国際標準化機構)が2009年に公表したISO 80000-2は,数学記号について定義している国際規格ですが,ここでは次のように書かれています.
2-6.1 $\mathbb{ N }$
the set of natural numbers,
the set of positive integers and zero
$\mathbb{ N }$ = {0, 1, 2, 3, ...}
$\mathbb{ N }^*$ = {1, 2, 3, ...}
この記述から判断するならば,自然数に0を含むのが国際標準といえそうです.余談ですが,ISO 80000-2英語版では"positive integer"なのにWikipedia日本語版の"ISO 80000-2"が「正の数」となっていたので,「正の整数」に訂正しておきました.これで修正したのは,たぶん5~6回目ぐらい,アカウント登録してからは2回目です(笑).

Whole number も integer(整数),またはpositive integer(正の整数),またはnon-negative integer(負でない整数)と説明されることがあり,定義がはっきりしないのですが,英語の本にはよく登場します.この3つの定義のどれかを掲載している辞書が多いのですが,ここ(THE FREE DICTIONARY)だけは3つの意味を併記していました.
whole number
1. A member of the set of positive integers and zero.
2. A positive integer.
3. An integer.
Counting number {1, 2, 3, ....} は文字通り「数える数=計数」ですが,意味はpositive integer(正の整数)で,比較的低学年の教科書によく登場します.

On-Line Encyclopedia of Integer Sequences = OEIS(オンライン整数列大事典)にはnatural numberの項目はなく,以下のようになっています.
A000027 {1, 2, 3, ...}
The positive integers. Also called the natural numbers, the whole numbers or the counting numbers, but these terms are ambiguous(しかしこれらの用語は曖昧). 
A001477 {0, 1, 2, 3, ...}
The nonnegative integers.
因みにOEISのA000045:Fibonacci numbers(フィボナッチ数)は,F(n)=F(n-1)+F(n-2) with F(0)=0 and F(1)=1と定義されていますが,Wikipediaでは,F(1)=1 and F(2)=1が併記されています.これは,数列の初項を0, 1のどちらからでも始めていいという意味だと思われます.

また,WolframMathWorldでは以下のように述べられています.
「自然数」という用語は、 「正の整数」{1,2,3,...}(OEIS A000027),「負でない整数」{0,1,2,3,...}(OEIS A001477)の中にあるが,自然数に0を含めるかどうかに関する一般的な合意はない.基準となる用語がないため, "counting number","natural number","whole number"より,"positive integer","non-negative integer"という用語を使用することを推奨する.
国立教育政策研究所が2016年に実施した「平成28年度全国学力・学習状況調査」の中学校第3学年数学Aにこんな問題が出てしまいました.
1  (2)  次のア~オまでの中から自然数をすべて選びなさい.
ア -5    イ 0    ウ 1    エ2.5    オ 4
正答例はウとオなんですが,海外で教育を受けた帰国生の中にはイも正解として答えた生徒もいるはずです.気になったので主催者にこのことを説明して何らかの考慮をしないのか問い合わせてみましたが,案の定「正答例の通りで,特に考慮はしない」との回答でした.

[Reference]
Natural Number
https://en.wikipedia.org/wiki/Natural_number
ISO 80000-2
https://ja.wikipedia.org/wiki/ISO_80000-2
Natural Number
http://mathworld.wolfram.com/NaturalNumber.html
平成28年度全国学力・学習状況調査問題・正答例・解説資料について
http://www.nier.go.jp/16chousa/16chousa.htm

Aug 5, 2017

Diophantine Equations

古代ギリシャの数学者Diophantus(ディオファントス)の墓には彼の生涯を語る文章が書かれていて,それをもとに没年齢を求める一次方程式の応用問題が有名ですが,これはその一次方程式のことではありません.

Diophantine Equations(ディオファントス方程式)は,係数が整数で$ax+by=c$や$x^2+y^2=z^2$などの形をしたindeterminate equation(不定方程式=解が無数に存在する方程式)の総称で,他にもいくつかのパターンがあります.この中のひとつ,2012年からの日本の高等学校「数学A」に登場した「整数の性質」(2022年度から廃止)で学んだ$ax+by=c$の形の不定方程式は,cがaとbの最大公約数またはその倍数のときに整数解(x, y)が存在し,Bézout's identity(ベズーの等式)と呼ばれています.

簡単な例として,
$2x+3y=1$ …①
の整数解を求めてみましょう.まず簡単な数を代入してみて解を一組見つけます.例えば,
$2・(-1)+3・1=1$ …②
なので$(x,y)=(-1,1)$が一組の解になります.①から②を引くと
$2・(x+1)+3・(y-1)=0$
となり,移項すると
$2・(x+1)=-3・(y-1)$
になります.ここで2と3は互いに素(公約数が1だけ)だから,$x+1$は3の倍数でないといけないので$x+1=3k$(kは整数)と表すことができ,同様に$y-1=-2k$と表せます.よって,①のすべての整数解の組は
$(x,y)=(3k-1,-2k+1)$(kは整数)
と表せます.

もし最初に見つけた解が$(2,-1)$なら,同様にして
$(x,y)=(3k+2,-2k-1)$(kは整数)
となりますが,kの値が一つずれているだけで同じ解集合を表しています.これはグラフでいうと,直線$2x+3y=1$上の,lattice point(格子点=座標が整数になる点)を表しています.

ところが,
$73x+67y=1$ …③
のような大きい数になると,一組の解が簡単に見つかりません.そんな時はEuclidean Algorithm(ユークリッドの互除法)を使います.
$73=67\cdot 1+6$ より $6=73-67\cdot 1$
$67=6\cdot 11+1$ より $1=67-6\cdot 11$
右下の式に右上の式を代入すると,
$1=67-(73-67\cdot 1)\cdot 11=73\cdot (-11)+67\cdot 12$ …④
だから$(x,y)=(-11,12)$が一組の解になります.③から④をひくと
$73(x+11)+67(y-12)=0$
となり,移項すると
$73・(x+11)=-67・(y-12)$
になります.ここで73と67は互いに素だから,$x+11$は67の倍数でないといけないので$x+11=67k$(kは整数)と表すことができ,同様に$y-12=-73k$と表せます.よって,③のすべての整数解の組は
$(x,y)=(67k-11,-73k+12)$(kは整数)
と表せます.

因みに,碑文の問題はDiophantus's riddle(謎)とかDiophantus puzzle(パズル)とか呼ばれていて,一次方程式の応用問題としても有名ですが,Nintendo DSというゲームの"Professor Layton and Pandora's Box(レイトン教授と悪魔の箱)"の第142問目にも登場します.

【Diophantine Equations 問題】
(1) Two farmers agree that pigs are worth 300 dollars and that goats are worth 210 dollars. When one farmer owes the other money, he pays the debt in pigs or goats, with "change" received in the form of goats or pigs as necessary. (For example, a 390 dollar debt could be paid with two pigs, with one goat received in change.) What is the amount of the smallest positive debt that can be resolved in this way?
(A) 5  (B) 10  (C) 30  (D) 90  (E)  210

(2) Jack and Jill visit the cake shop every day, and Jack always buys jam doughnuts, and Jill chocolate éclairs. The jam doughnuts cost 0.95 each and the chocolate éclairs cost 0.97. At the end of the  week the non-itemised bill from the cake shop is 42.38. How much must each pay?
(解答はこちら

[Reference]
Diophantus's Riddle
http://mathworld.wolfram.com/DiophantussRiddle.html
Diophantine equation
https://en.wikipedia.org/wiki/Diophantine_equation
Diophantine equation
http://artofproblemsolving.com/wiki/index.php?title=Diophantine_equation
Number Theory Using Modular Arithmetic to Solve Indeterminate Equations
https://trans4mind.com/personal_development/mathematics/numberTheory/indeterminateEquationsCongruences.htm

Aug 1, 2017

Circular Functions

Trigonometric functions(三角関数)を,unit circle(単位円)を用いて定義した場合,circular functions(円関数)と呼ぶ場合があります.日本では主に三角関数と呼ばれていますが,英語の本ではCircular FunctionsもTrigonometric Functionsもよく使われています.

■Circular (Trigonometric) Functions 円関数(三角関数)
    sine, cosine, tangent
■Reciprocal Circular Functions 割円関数(割三角関数)
    cosecant, secant, cotangent
■Inverse Circular Functions 逆円関数(逆三角関数)
    arcsine, arccosine, arctangent

このように,circular functionsはcircle(円)を表す関数ではありません.Hyperbolic functions(双曲線関数)もhyperbola(双曲線)を表しません.円関数は円のparameter(媒介変数)表示に,双曲線関数は双曲線の媒介変数表示に使われるのでこの名がついています.

■円の媒介変数表示       $(x, y)=(\cos t, \sin t)$     →  $x^2+y^2=1$
■双曲線の媒介変数表示 $(x, y)=(\cosh t, \sinh t)$  →  $x^2-y^2=1$

世界中最も多くの国で普及している高校カリキュラム「国際バカロレアディプロマプログラム(IB Diploma Program)」のMathematics Higher Level(主に理系向き)ではReciprocal Circular FunctionsもInverse Circular Functionsも登場します.

因みにElliptic Functions(楕円関数)もellipse(楕円)ではありません.

[Reference]
"Mathematics HL Core (3rd edition)" Haese Mathematics

Jul 24, 2017

Babylonian Method

平方根の近似値を求めるアルゴリズムです.例えば,$\sqrt{5}$の推測値として最初にa=2とおいて,次の計算をします.$$\frac{1}{2}\left( a+\frac{5}{a} \right)$$この計算で得た値を新たに$a$とおいて,同じ計算を繰り返します.
\begin{align}
&\frac{1}{2}\left( 2+\frac{5}{2} \right)=\frac{9}{4}=2.25\\
&\frac{1}{2}\left( \frac{9}{4}+\frac{5}{\frac{9}{4}} \right)=\frac{161}{72}=2.236111111\cdot\cdot\cdot\\
&\frac{1}{2}\left( \frac{161}{72}+\frac{5}{\frac{161}{72}} \right)=\frac{51841}{23184}=2.236067978791\cdot\cdot\cdot\\
\end{align}$\sqrt{5}=2.236067977499\cdot\cdot\cdot$なので,3回の計算で驚くほど速く$\sqrt{5}$に近づいたことが分かります.この方法はBabylonian MethodまたはHero's method(Heroはあのヘロンの公式のヘロンと同一人物)と呼ばれています.

この式をよく見ると,$a$と$\frac{5}{a}$のarithmetic mean(算術平均=相加平均)を求める式になっています.面積が$s$になる長方形の1辺を$a$とすると,他の1辺は$\frac{s}{a}$になるので,これらの算術平均を新たな$a$として同じ計算を繰り返すと,正方形の1辺に近づいていくというわけです.

一般に$\sqrt{s}$を求める場合を漸化式で表せば次式になります.$$x_{n+1}=\frac{1}{2}\left( x_n+\frac{s}{x_n} \right)$$極限では$x_{n+1}$も$x_n$もほぼ同じなので,その値をαとおいて上式に代入すると,$$α=\frac{1}{2}\left( α+\frac{s}{α} \right)$$整理すれば,$α^2=s$すなわち,$α=\pm\sqrt{s}$となります.

これは17世紀頃に発見されたNewton's Method(ニュートン法)$$x_{n+1}=x_n-\frac{f(x_n)}{f'(x_n)}$$に$f(x)=x^2-s$を当てはめた式と同じになりますが,もちろん,Babylonian Methodの方がずっと早くに知られていたことになります.

急速に近似する様子を確かめるものをGeoGebraでつくってみました.試してみてください.

因みに,平方根の近似値を求める方法は,小数点から 2 桁ずつ区切って割り算のようにする方法 extraction of square root(開平法)がよく知られています.

<Reference>
Methods of computing square roots
https://en.wikipedia.org/wiki/Methods_of_computing_square_roots

Jun 9, 2017

Section Formula

conic section
切断面をcross sectionといい,特に円錐の切断面(円錐曲線)をconic sectionといいます.circle(円),ellipse(楕円),parabola(放物線),hyperbola(双曲線)がこれに含まれます.

section formulaといえばその関係の公式だと思ってしまいますが,これは2点A(x1),B(x2)を結ぶ線分ABをm:nに分ける点の公式$$\frac{mx_2+nx_1}{m+n}$$のことをいいます(n>0で内分,n<0で外分).でもよく見ると分子の項の順番が違いますね.日本の教科書では次の式のほうが一般的です.$$\frac{nx_1+mx_2}{m+n}$$もちろんどちらも同じ値になりますが,海外では上の式のほうが一般的です.

この式のnを正の数に限定してinternal division(内分)とexternal division(外分)を式で区別するなら,上の2式は内分点,次の2式は外分点になります.どちらが覚えやすいでしょうか.$$\frac{mx_2-nx_1}{m-n}$$$$\frac{-nx_1+mx_2}{m-n}$$
この公式は,coordinate geometry(座標幾何)だけでなく,vector(ベクトル)やcomplex plane(複素平面)でも登場するうえ,物理学ではcenter of gravity(重心)(またはcenter of mass(質量中心)ともいう)などを求めるのにも使われます.



この公式を使う文章題は見たことがなかったので,簡単なものを作ってみました.この公式を使って解いてみてください.
(問題)一直線の道で,Aさんが家から東へ2kmの地点に,Bさんが家から東へ8kmの地点にいる.Aさんは自転車で時速11km,Bさんは徒歩で時速5kmで進む.
(1) お互い向かい合って進むとき,家から何kmの地点で出会うか.
(2) お互い家から遠ざかる方向へ進むとき、家から何kmの地点でAさんがBさんに追いつくか.
(正解は右図です)

<reference>
Section Formula
https://brilliant.org/wiki/section-formula/
質量中心
http://www14.plala.or.jp/phys/tools/10.html

Apr 22, 2017

Translation

日常では「翻訳」としか訳すことがないtranslationですが,数学では「平行移動」という意味があり,移動のさせ方はベクトルで表します.日本の教科書でよく使われる「x軸方向に$p$,y軸方向に$q$平行移動したもの」という言い方は,a translation of $\left( \begin{array}{c} p \\q \\ \end{array} \right)$とか,be translated through $\left( \begin{array}{c} p \\q \\ \end{array} \right)$のように表されます.他にshiftやmoveという用語も使われることがあります.

向きも形も変えない移動だけのtranslationに加えて,向きの変わるrotation(回転移動),reflection(対称移動),大きさの変わるscaling / resizing / zooming(拡大縮小),傾斜するshear / skew(せん断)など,図形の平行を保つlinear transformation(一次変換)を合わせてaffine transformation(アフィン変換)といい、さらに拡張して図形の平行を保たない場合もある変換をprojective transformation / homography(射影変換)といいます.

rotation  $\left( \begin{array}{ccc} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{array}\right)$$\begin{pmatrix} x  \\ y \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x\cos \theta-y\sin \theta \\ x\sin \theta+y\cos \theta \end{pmatrix}$   $ \theta $回転

scaling  $\begin{pmatrix} a & 0 \\ 0 & b \end{pmatrix}$$\begin{pmatrix} x  \\ y \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} ax  \\ by \end{pmatrix}$  横にa倍,縦にb倍拡大縮小

shearing  $\begin{pmatrix} 1 & t \\ s & 1 \end{pmatrix}$$\begin{pmatrix} x  \\ y \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x+ty  \\ sx+y \end{pmatrix}$ 横にyのt倍移動,縦にxのs倍移動するせん断(長方形が平行四辺形になります)

translation  $\begin{pmatrix} x  \\ y \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} p  \\ q \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x+p  \\ y+q \end{pmatrix}$  x軸方向に$p$,y軸方向に$q$平行移動

以上のように,2×2行列を掛ける一次変換では(0,0)が(0,0)に移るのでtranslationを表すことはできないし、平行を保つのでprojective transformationを表すことはできません.しかし,座標(x, y)を(x, y, 1)と表すことでこれらをすべてまとめて表すことができます.そのため,変換行列を3×3にして(3, 3)成分を1とします。

rotation  $\left(  \begin{array}{ccc}   \cos \theta  & -\sin \theta  & 0 \\ \sin \theta  & \cos \theta  & 0 \\0 &0 &1\end{array}\right)\left(  \begin{array}{ccc}   x\\ y\\1\end{array}\right)=\left(  \begin{array}{ccc}   x\cos \theta -y\sin \theta \\ x \sin \theta + y \cos \theta \\ 1 \end{array} \right) $

scaling  $\left(  \begin{array}{ccc}   a  & 0  & 0  \\ 0  & b  & 0 \\ 0  & 0  & 1 \end{array}\right)\left(  \begin{array}{ccc}   x  \\ y \\ 1 \end{array}\right)=\left(  \begin{array}{ccc}   ax  \\ by \\ 1 \end{array}\right)$

shearing  $\begin{pmatrix} 1 & t &0 \\ s & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1 \end{pmatrix}$$\begin{pmatrix} x  \\ y \\ 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} x+ty  \\ sx+y \\ 1 \end{pmatrix}$

translation  $\left(  \begin{array}{ccc}   1  & 0  & p  \\ 0  & 1  & q \\ 0  & 0  & 1 \end{array}\right)\left(  \begin{array}{ccc}   x  \\ y \\ 1 \end{array}\right)=\left(  \begin{array}{ccc}   x+p  \\ y+q \\ 1 \end{array}\right)$

因みに,映画"Transformers"(変形ロボット),映画"The Transporter"(運び屋)はありましたが,映画"Translator"はまだないですね(笑).

<Reference>
Function Translations
http://www.purplemath.com/modules/fcntrans.htm

Quick Reviews on Local Descriptors, SIFT and Single Object Recognition by Fei-Fei Li.
https://sensblogs.wordpress.com/2011/08/23/quick-reviews-on-local-descriptors-sift-and-single-object-recognition-by-fei-fei-li/

Apr 4, 2017

First Principles

直訳すると「第一原理」となるfirst principlesは形而上学や自然科学における用語としては「他のものから推論することができない命題」という意味があります.数学では定義や公理がこれに当たり,「定理を導くための前提となる命題」ともいえます.

微分の問題で,differentiate from first principlesといわれたら,直訳すれば「第一原理から微分せよ」となりますが,これは「定義に従って微分せよ」という意味で,find the derivative by (using the) limit definitionという表現をする場合もあります.

具体的には,次のlimit definition(微分の定義)の式を使って,derivative(導関数)を求めよという意味になります.$$\begin{align} f'(x) &= \lim_{h\to 0} \frac{f(x + h) - f(x)}{h} \\ &= \lim_{Δx\to 0}\frac{f(x + Δx) - f(x)}{Δx}\end{align}$$よく$h$が使われますが,$Δx$,$δ$,dもよく使われるので,delta methodとも呼ばれています(deltaの大文字は$Δ$,小文字は$δ$,alphabetのdに当たります).

数学で導関数という意味のderivativeは,言語学では派生語,経済学では金融派生商品,化学では誘導体などいろいろな意味があります.「派生する」という動詞deriveのderivative(派生語)になっています.つまり,"derivative"はderivativeです(笑).

例えばtanxの微分は,sinx,cosxを微分してからquotient rule(商の微分)を用いて次のようにすることが多いのですが,$$\begin{align}(\tan x)'  &= \left(\dfrac{\sin x}{\cos x}\right)' \\ &= \dfrac{(\sin x)'\cos x-\sin x(\cos x)'}{\cos^2 x} \\ &= \dfrac{\cos^2x+\sin^2x}{\cos^2 x} \\ &= \dfrac{1}{\cos^2x} \\ &= \sec^2 x \end{align}$$これを微分の定義に従って計算すると次のようになります.$$\begin{align}(\tan x)' &= \lim_{h\to 0}\frac{\tan(x+h)-\tan x}{h} \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{1}{h}\left(\dfrac{\tan x+\tan h}{1-\tan x\tan h}-\tan x\right) \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{1}{h}\left(\dfrac{\tan h+\tan^2 x\tan h}{1-\tan x\tan h}\right) \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{\tan h}{h}\cdot\dfrac{1+\tan^2 x}{1-\tan x\tan h} \\ &= \lim_{h\to 0}\dfrac{\sin h}{h}\cdot\dfrac{1}{\cos h}\cdot\dfrac{1}{1-\tan x\tan h}\cdot\dfrac{1}{\cos^2 x} \\ &= 1\cdot 1\cdot \dfrac{1}{1-0}\cdot \sec^2 x
 \\ &= \sec^2 x \end{align}$$【First Principles 問題】
Differentiate lnx(=logex) from first principles.
定義に従ってlnx(=logex)を微分せよ.
(正解はこちらです)

<Reference>
The Derivative from First Principles - Interactive Mathematics
http://www.intmath.com/differentiation/3-derivative-first-principles.php

Jan 6, 2017

p-series


雑誌や新聞等の連載記事,同テーマで続けて出版される書籍、テレビなどの連続番組,一定期間行われるスポーツの試合などをseriesといいますが,数学では数列の総和をseries(級数)といい,有限数列の和や無限数列の中の有限個の部分和は有限級数,無限数列の和は無限級数といいます.そして,和がある値に確定するときはその値を級数の和といいます.これでは級数の和は「数列の和の和」という意味になってしまいますが,級数は一般にΣまたは+と…などの記号で表したもので,値が確定した場合にのみ,その値を級数の和といいます.

Calculus(微分積分)のconvergence tests(収束判定)の中でよく登場する級数のひとつにp-series(p-級数)$$\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n^p}=\dfrac{1}{1^p}+\dfrac{1}{2^p}+\dfrac{1}{3^p}+\cdots$$があります.これはp=-qとすれば$\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}{n^q}$と表すこともできるのですが,逆数の和ということを強調するためにこう表しています.pの範囲を1より大きい数とする場合,正の数とする場合,実数とする場合などがありますが,p>1で収束し,p≤1で発散するので,Leonhard Euler(1707-1783)の時代はp>1のときにどんな値に収束するのかが主に話題になっていました.例えばp=2のとき,$$\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n^2}=\dfrac{1}{1^2}+\dfrac{1}{2^2}+\dfrac{1}{3^2}+\cdots=\frac{\pi^2}{6}$$となること(Basel problem)もEulerが発見しました.

P-seriesで特にp=1のときは,harmonic series(調和級数)$$\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n}=\dfrac{1}{1}+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}+\cdots$$といい,項が限りなく0に近づくのに∞に発散する(値が無限に大きくなる)ことがよく知られています.この証明は多くの書籍やサイトで解説されていますので探してみてください.

P-seriesのpはpower(冪=べき)を意味するようですが,power series(冪級数)$$\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}{a_nx^n}=a_0+a_1x+a_2x^2+a_3x^3+\cdots$$とは別のものなので,p-seriesのpは,当初positive power(正の冪)のときだけを考えるという意味のpだったのではないかと思います.

因みに,p-seriesの式は,Riemann zeta function(リーマン-ゼータ関数)$$\zeta(s)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n^s}=\dfrac{1}{1^s}+\dfrac{1}{2^s}+\dfrac{1}{3^s}+\cdots$$でsをpで表したときと同じ式になっています.後に,Bernhard Riemann(1826-1866)が解析接続をした(定義域を複素数へ広げた)とき,$\zeta(s)$の表記を使ったことに敬意を表して変数にはsが用いられているそうです.

<reference>
Series Convergence Tests
http://aleph0.clarku.edu/~djoyce/ma122/posseries.pdf
"Calculus For Dummies"
by Mark Ryan (2003 For Dummies)
Riemann Zeta Function
http://mathworld.wolfram.com/RiemannZetaFunction.html