英語の書籍やウェブページを読んだり,動画を視聴したりしていると,よく使われる表現だけでなく,あまり使われない表現も知っておかなければ,意味が理解できない場合があります.数学の話に登場する用語が意外なこともよくあります.直訳しても伝わらない用語,日本ではあまり使われていない用語,辞書に掲載されていない用語にもたくさん出会います.それらの解説と関連する話題や練習問題をまとめています.英語で数学を学ぶ人の参考になれば幸いです.(数式作成にTexのコマンドを使えるMathJaxを利用しています)
Jan 6, 2017
p-series
雑誌や新聞等の連載記事,同テーマで続けて出版される書籍、テレビなどの連続番組,一定期間行われるスポーツの試合などをseriesといいますが,数学では数列の総和をseries(級数)といい,有限数列の和や無限数列の中の有限個の部分和は有限級数,無限数列の和は無限級数といいます.そして,和がある値に確定するときはその値を級数の和といいます.これでは級数の和は「数列の和の和」という意味になってしまいますが,級数は一般にΣまたは+と…などの記号で表したもので,値が確定した場合にのみ,その値を級数の和といいます.
Calculus(微分積分)のconvergence tests(収束判定)の中でよく登場する級数のひとつにp-series(p-級数)∞∑n=11np=11p+12p+13p+⋯があります.これはp=-qとすれば∞∑n=1nqと表すこともできるのですが,逆数の和ということを強調するためにこう表しています.pの範囲を1より大きい数とする場合,正の数とする場合,実数とする場合などがありますが,p>1で収束し,p≤1で発散するので,Leonhard Euler(1707-1783)の時代はp>1のときにどんな値に収束するのかが主に話題になっていました.例えばp=2のとき,∞∑n=11n2=112+122+132+⋯=π26となること(Basel problem)もEulerが発見しました.
P-seriesで特にp=1のときは,harmonic series(調和級数)∞∑n=11n=11+12+13+⋯といい,項が限りなく0に近づくのに∞に発散する(値が無限に大きくなる)ことがよく知られています.この証明は多くの書籍やサイトで解説されていますので探してみてください.
P-seriesのpはpower(冪=べき)を意味するようですが,power series(冪級数)∞∑n=0anxn=a0+a1x+a2x2+a3x3+⋯とは別のものなので,p-seriesのpは,当初positive power(正の冪)のときだけを考えるという意味のpだったのではないかと思います.
因みに,p-seriesの式は,Riemann zeta function(リーマン-ゼータ関数)ζ(s)=∞∑n=11ns=11s+12s+13s+⋯でsをpで表したときと同じ式になっています.後に,Bernhard Riemann(1826-1866)が解析接続をした(定義域を複素数へ広げた)とき,ζ(s)の表記を使ったことに敬意を表して変数にはsが用いられているそうです.
<reference>
Series Convergence Tests
http://aleph0.clarku.edu/~djoyce/ma122/posseries.pdf
"Calculus For Dummies"
by Mark Ryan (2003 For Dummies)
Riemann Zeta Function
http://mathworld.wolfram.com/RiemannZetaFunction.html
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